dermatology report

ペットの腸内細菌



はじめに

「犬のアレルギー性皮膚疾患と言えばアトピーが多い」と思われていますが、臨床現場の最前線で犬と猫のアレルギーを診察して感じることは、「実は食物アレルギーがとても多い」ということです。
アトピー性皮膚炎の治療は様々ですが、食物アレルギーの治療はシンプルで「ダメなものを食べない」です。

犬の食物アレルギーについて

食物アレルギーは、例えるなら火事の出火元を的確に見極め消化活動をしなければならないのと同じです。ガソリンを撒き散らしながら消防車で放水活動してもなかなか鎮火しないですね。

ヒトの食物アレルギーの出火元(原因トップ3)は「鶏卵」「乳製品」「小麦」です。
ちなみに犬の食物アレルギーの出火元(原因トップ3)は「大豆」「米」「ジャガイモ」です。

犬の食物アレルギーと腸内細菌の研究について

米国シカゴ大学の研究チームは、「腸内細菌の中でもクロストリジウム属の細菌が食物アレルギーを予防するカギを握っている」というセンセーショナルな研究結果を発表しました。
腸内細菌が食物アレルギーにどう影響するかを調べるために研究チームは、
1)腸内細菌が全く存在しない無菌マウス
2)抗生物質を投与して腸内細菌を著しく減らしたマウス
3)正常の腸内細菌をもつ正常マウス
の3グループにわけ、食物抗原であるピーナッツを投与した時の反応を見ました。

研究結果について

1)「無菌マウス」と2)「抗生物質で腸内細菌を減らしたマウス」は、3)「正常マウス」に比べてアレルギー反応が強く出る(抗体が多くできる)ことがわかりました。
つまり、「無菌マウス」と「抗生物質で治療したマウス」は、強い免疫反応を起こしたのです。

次に、アレルギー反応を起こした「無菌マウス」と「抗生物質で治療したマウス」に、ヒトや動物の腸管内に常在しているクロストリジウム菌を注入すると、食物アレルゲンへの反応を減らせました。
ところが、最も多い腸内細菌であるバクテロイデス菌を注入しても、反応を減らすことはできませんでした。
つまり、クロストリジウム属の細菌が食物アレルギーを予防するはたらきをもっていることがわかりました。
さらに研究チームは、クロストリジウム属の細菌が免疫に関わるタンパク質を分泌することによって、アレルゲンが腸の粘膜を通りづらくなることも明らかにしました。

考察

この論文から分かったことは、
・6週間の抗生物質の内服により、糞便と回腸の細菌数は減り、組成と多様性が変わった。
・抗生物質を投与したマウス、または腸内細菌叢のないマウスで食物抗原に対する感作が増加することが分かった。
・さらに、クロストリジウム属の細菌には、食物アレルゲンが血液中に入ってアレルギー反応を起こすことを防ぐ効果を期待できそうだと言うことが分かった。

<参考文献>
Andrew T. Stefka et al.Commensal bacteria protect against food allergen sensitization. Proc Natl Acad Sci U S A. 2014 Sep 9; 111(36): 13145–13150.

最後に

帝王切開で生まれると食物アレルギーになりやすいのか?という研究があります。
この研究によると、同じ産婦人科で生まれた合計459人の子供を追跡調査した結果、帝王切開で生まれた少なくとも1種類のアレルギーを持つ両親を持つ子供はアレルギー疾患のない両親から出生した子供と比べて、食物アレルギーを発症する確率が高かったと言います。
一方、アトピー性皮膚炎における帝王切開の影響は明らかではなかったです。

この論文からは、帝王切開による出生は食物アレルギーの発症には影響するけど、乳幼児期のアトピー性皮膚炎の発症には影響しなかったということがわかります。

<参考文献>
Papathoma E, et al. Cesarean section delivery and development of food allergy and atopic dermatitis in early childhood. Pediatric Allergy and Immunology 2016

東京動物アレルギーセンターでも、腸内細菌をどう改善すればアレルギーの改善につながるかを日々追求しています。
アレルギーでお悩みの方がいらっしゃったら是非一度ご相談下さい。

東京動物アレルギーセンター
https://taac.jp